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「僕と彼女と彼女の生きる道」とは?

2004年1月6日から3月23日まで放送されていたドラマ「僕と彼女と彼女の生きる道」。
このドラマは「僕シリーズ」の2作品目となっており、この作品では「絆」がテーマに描かれています。
仕事にしか興味がなく家族には無関心の主人公は、ある日妻から離婚を切り出されてしまい、訳が分からず戸惑っていたが、妻は幼い一人娘を残して家を出ていってしまった。
最初は娘を妻の実家に預けようと考えたが、娘の家庭教師からアドバイスもあり、娘と一緒に暮らし続ける決意をし、だんだん父親としての自覚を持っていくという物語となっています。
この作品で草なぎ剛が主演を務めており、「僕シリーズ」の中でも視聴率が最高になったヒット作品です。

 愛と死をテーマに、余命一年と宣告された主人公の前向きな姿を描き、見る人に感動と勇気を与えた『僕の生きる道』。
 あれから一年、そしてついに、2004年を飾る草なぎ剛主演の感動のドラマがまた始まります。
タイトルは『僕と彼女と彼女の生きる道』。 
テーマは『絆』。
“絆”は、絶とうと思っても断ち切れない結びつき。
 「夫婦の絆」「親子の絆」など、本当は太く、強固に結びついているはずの『親子』や『夫婦』。
しかし、離婚件数の増加、子供への虐待などが毎日のように報道される現代を生きる我々にとって、“絆”はあまりにも細く、か弱いものに感じられます。
 本当に“絆”は存在するのでしょうか……。
 ここに、一人の男がいます。
 その男はある日突然妻に逃げられます。
 自分なりの価値観でそれなりに一生懸命生きてきたつもりだったのに、その理由がわかりません。
 そこに一人の女の子がいます。
 その男の娘です。
 初めて二人きりになり、今まで娘と心から向き合ったことのない男は戸惑い、迷い苦しみます。
 そしてもう一人、女がいます。
 女は現代的で聡明な女性。幸せとは何かに悩み、まだ自分の生きる道を見出せずにもがいている女性です。当然、子持ちの無責任な男には、興味を持つどころか軽蔑さえしています。
 この物語は、今を生きる男女が、絆を結ぶことの難しさとともに、人を愛する事とは、生きていく事とは、そして、本当の幸せとは何かを問うヒューマンストーリーです。
 橋部敦子が作り出す独特の世界観の中、新たなキャストと演出陣も加わり、またもや人々の心にも深く染み込み、揺り動かしていくドラマとなるでしょう。
 ご期待下さい!

 新築のおしゃれなマンション。小柳徹朗(草なぎ剛)はいつもの朝のようにダイニングテーブルで新聞を読みながらココアを飲んでいた。
 「話があるんだけど…」。
 洗濯をおえた妻の可奈子(りょう)が静かにきりだした。
 「離婚してください」「朝から冗談、やめてくれよ」。
 しかし加奈子が本気と気づいて、徹朗は動揺した。
 「とにかくなるべく早く帰ってくるから、ちゃんと話そう」「こんな時に会社行くの?」。
 それでも徹朗は逃げるように家を出た。
 都市銀行の法人営業部。それが徹朗の職場だ。2歳年上ながらシングルの先輩、宮林功二(東 幹久)、部下の坪井マミ(山口紗弥加)と岸本肇(要 潤)、そして上司の井上啓一(小日向文世)が同僚だ。
 「今夜、得意先の宴席に出てくれないか?」。
 一瞬ためらったが、仕事第一の徹朗は断らなかった。だから帰宅は遅くなった。
 「ただいま」。部屋を明るくして驚いた。可奈子のものすべてが消えていた。もちろん本人も。
 翌朝、7歳になる一人娘・凛がいることに気づいた。
 「なんでいるんだよ」。可奈子は一人娘の凛だけ残していったのだ。
 「お母さんは旅行に出かけたんだ。急いで支度しなさい」。そうは言ってみたが、家の中のことはすべて可奈子任せだったため、着替えだけでもひと苦労。娘と2人きりの朝食は気まずい。
 「お母さん、いつ帰ってくるんですか?」。小学生らしからぬ他人行儀だった。徹朗は、凛のことがよくわからない自分に気づいた。徹朗の返事はその場しのぎで、トイレにいきたがる凛を急かして、徹朗は家を飛びだした。
 会社に着くと、「可奈ちゃん、出ていったって?」。宮林からいきなり聞かれて徹朗は息をのんだ。可奈子から電話がかかってきたという。
 「パリへ行くらしい。子供はお前に育ててほしいって」。まるで事務連絡だ。
 「ふざけてる」。いったい可奈子は何が不満なんだ。徹朗には離婚の理由がまったく思い当たらなかった。
 「ただいま」。徹朗がコンビニ弁当を下げて帰宅すると、トイレから見知らぬ女が出てきた。
 「凛ちゃんのお父さんですか?」。凛に英語を教えてくれている家庭教師の北島ゆら(小雪)だ。
 「奥様、今日はどうされたのですか?」「旅行なんです」。本当のことを言うわけにはいかない。凛は少し元気がなかったらしいが、ゆらは何事も気づくことなく帰っていった。

 徹朗がホッとしたのも束の間、今度は可奈子の母親、大山美奈子(長山藍子)がやって来た。
 「何が原因なの?」「まったくわからなくて」。そう答えるしかない。
 「凛ちゃんの面倒みましょうか?」。願ってもない申し出に徹朗は内心しめたと喜んだが、美奈子はすぐに考えを改めた。
 「やっぱり実の父親と暮らすのが一番よね」「も、もちろんです」。徹朗は良き父親を装った。
 その後徹朗は、美奈子の家にいかないかという話を凛にすると、凛は涙を流した。
 「あ、この話はもういいから」。徹朗は、美奈子の家の近くに転校させようと考えていたのだ。
 29歳にして念願のマイホームを建てた。夏には家族でハワイにも行った。離婚の原因がわからない苛立ちはいずれ凛に向けられた。
 「早く寝なさいって言っただろ」。
 「ごめんなさい」。
 しばらくすると、徹朗はようやく可奈子を見つけた。
 「どうして離婚したいんだ?」「本当にわからないの?」。
 たったそれだけのやりとりで可奈子は徹朗の前からタクシーで走り去った。徹朗は凛の担任教師の石田(浅野和之)から呼びだされた。凛が毎日忘れ物をするようになったという。
 「奥様、どうかされたんですか?」。徹朗は屈辱をグッとこらえた。
 休みは朝からたまりにたまった家事に悪戦苦闘することになった。洗濯機すら解説書がないと動かせない。可奈子がいないと何がどこにあるのか皆目わからない。徹朗の苛立ちはつのるばかり。だから凛のたどたどしいハーモニカについ怒鳴ってしまった。
 「うるさいんだよ」。
 その後、仕事中に凛からひっきりなしにケータイがかかってくるようになった。
 「まだ仕事だと言ってるだろ」。凛の身の上に何が起こったかも知らずに─。

 凛(美山加恋)のことで仕事に集中できない徹朗(草なぎ剛)は井上部長(小日向文世)から注意された。「もう大丈夫です。今日退院ですし」。美奈子(長山藍子)に面倒みてもらうしかない。そのためには転校させなければならない。担任の石田(浅野和之)に相談すると、凛はまもなく開かれるクラスの音楽会でハーモニカを吹くのを楽しみにしているという。
 ゆら(小雪)が退院祝いのケーキをもって現れると、凛は久しぶりに笑顔をのぞかせた。ところが床に落ちていた商店街のサービススタンプに気づいた途端、泣きだした。「どうしよう。凛のせいだ」。母親の可奈子(りょう)が家出する直前、凛はスタンプの缶をひっくり返したまま片づけなかった。「そのせいでお母さんは出ていったと思いこんでいるみたいです」。ゆらは徹朗の帰宅を待って伝えたが、徹朗の反応は「それで」の一言きり。ゆらが釈然としないでいると「凛のことで俺に意見しないでください。来週末に引っ越しますから」。つまり次回でレッスンは最後。ゆらは感情を押さえて「わかりました」とだけ答えた。
 凛の態度が変わった。「1人で行きます」。徹朗が出勤してから登校するようになった。「ただいま」「お帰りなさい」。徹朗が帰ってくると自分の部屋にひきこもった。「無視かよ」。明らかに徹朗を避けている。
 日曜日、徹朗は実家を訪れた。まもなく母親の三周忌。可奈子が来れないと伝えると父親の義朗(大杉漣)は不満をあらわにした。「女房にわがまま言わせて、どうするんだ」。家出したなんて言えるわけがない。晴れない気分で徹朗が帰宅すると、レッスン日でもないのにゆらが来ていた。「凛ちゃんに頼まれ事をされちゃって」。
 ところが徹朗と面とむかうと凛は話さない。結局ゆらから聞きだせたのは出前の寿司で夕食をすませて、凛が自分の部屋に消えてからだった。「おばあちゃんの家に行くのは音楽会が終わってからにしてほしいって」。徹朗と美奈子の会話を盗み聞きしたようだ。「音楽会なら転校先でもあるでしょ。俺がちゃんと納得させます」。
 そして徹朗はゆらにこう付け加えるのを忘れなかった。「家庭教師以上のことはしてくれなくてけっこうですから」。
 会社の昼休み。徹朗が休憩室でコーヒーを飲んでいると、宮林(東幹久)がウンザリした表情で携帯電話を切った。「妹から旦那のグチ。家族の団らんがないって」。部下の岸本(要潤)も加わっていつしか話題は少年時代の思い出になった。「家族の団らんなんてドラマだけだよ」。徹朗は決めつけたが、宮林と岸本は父親とよくキャッチボールしたという。「ないんだ、お前」。
 ゆらは友達に徹朗のことをボヤいていた。「何もわかってないくせに、自分が父親だってことは主張するのよ」。その時ゆらの携帯電話が鳴った。「こわいよぉ」。おびえた凛の声が聞こえた。
 1人で留守番をしていて雷が鳴りだしたものだから脅えているらしい。「ゆら先生、来て」。行ってやりたいが、徹朗の言葉がよみがえった。会社に連絡すると徹朗はまだ残業していた。「用件だけ伝えます」。ゆらは凛の様子を伝えると電話を切った。すぐさま帰宅してくれるものと期待した。しかし徹朗が家に着いたのは遅かった。そして凛をなだめるゆらの姿に徹朗の表情は強張った。「すみません。勝手なことして」「最後のレッスンの日以外は来ないでください」。徹朗の声は怒りを秘めていた。
 しかし今夜のゆらは引き下がらなかった。「雷をとてもこわがって、私が来るまで泣いてました」「仕事をほうりだすわけにいかないだろう」。冷静なゆらと、自分を必死に正当化しようとする徹朗。張りつめた空気が流れた。「あなた、何もわかってないです」。凛との生活は徹朗にストレスを募らせる一方だった。そんな矢先、可奈子から連絡がはいった。
 「わかるように説明してくれ」。徹朗から迫られた可奈子は強い目で見返すときっぱりと言った…。

 徹朗(草なぎ剛)は小学校の音楽会が終わってから、凛(美山加恋)を美奈子(長山藍子)に預かってもらうことにした。「ありがとうございます」。徹朗の前ではニコリともしなかったが、うれしくてすぐにゆら(小雪)に知らせた。「よかったね」。内心ゆらは複雑だった。すでに家庭教師はやめたし、徹朗からは口出ししないでほしいとクギを刺されている。いつまでも関わりつづけるわけにいかない。
 徹朗は可奈子が送ってきた離婚届にハンコを押して提出した。「えっ!」。さすがに宮林(東幹久)は驚きを隠さなかった。仲人をしてくれた上司の井上(小日向文世)にも報告した。「お前に対する評価は離婚ぐらいじゃ変わらない」。その一言で徹朗はひとまず胸をなでおろした。だからマミ(山口紗弥加)から相談事をもちかけられて、こう返事した。「来週以降ならゆっくり聞くよ」。あと1週間すれば凛の世話から開放される。
 徹朗はゆらから呼び出された。「凛ちゃん、お母さんが今どこで何をしてるのか、知りたがってます」。凛がひっきりなしに連絡しているらしい。「わかりました。俺から凛に話しますから」。
 その夜、徹朗は一緒に宅配ピザをほおばりながらきりだした。「パリにいるんだ。そこで美術の勉強をしてる」。一呼吸おくと、徹朗は真顔で凛を見つめた。「もうお母さんは帰ってこないんだ。お父さんとお母さん、離婚したんだ。ごめんな」。凛は無言でうなずいた。2人は黙々とピザを食べつづけた。
 徹朗は父親の義朗(大杉漣)にも離婚を伝えるために実家をたずねた。やもめ暮らしの長い義朗は家事をうまくこなしていた。「父さん、浮気してただろ」「当たり前だろ。最近じゃ、女房から離婚をきりだされる情けない男もいるみたいだが」。これではとても打ち明けられない。徹朗は押し入れの中から、小学1年生のときに書いた作文を探しだした。「あの頃、何考えてたのかなあと思って」「暇だな、お前」。義朗は呆れたように言った。帰宅すると美奈子が来ていた。義朗に離婚を言いそびれたと打ち明けると、美奈子は徹朗に頭を下げた。「離婚はしかたないわ。でも母親が子供を手放すなんて、しちゃいけないことよ。可奈子の母親として私にも責任があるわ」。しきりにわびる美奈子に徹朗は戸惑いを感じていた。「凛ちゃんを引き取ったら母親代わりになれるよう、一生懸命やります」。その夜、徹朗は実家から持ち帰った作文を読んで、思わずつぶやいた。「ホントに俺が書いたのかよ」。
 翌朝、徹朗は凛のふくハーモニカの音で目覚めた。「いよいよ音楽会だな。がんばれよ」「はい、がんばります」。たったそれだけのやりとりだったが、2人の間にはこれまでとは違った空気が生まれた。いよいよ音楽会本番。「この音楽会が凛さんとみんなの最後の思い出になるでしょう」。担任の石田(浅野和之)に紹介されて凛は緊張した。おかげで演奏を間違ってしまった。凛はハーモニカを握ったまま涙ぐんでいた。
 ゆらは勝亦(大森南朋)から2人きりの食事に誘われた。「ゆらのことが好きなんだ」。どおりで亜希(田村たがめ)がいてはまずいわけだ。これまで勝亦のことは友達としてか見てこなかったから、ゆらは返事に窮した。「とりあえず、食べていい?」。真剣な勝亦におかまいなく、ゆらは目の前のオムライスにパクついた。
 徹朗が帰宅すると、凛はしょんぼりとソファに座っていた。「どうかしたのか?」。急に泣きだした凛に徹朗はうろたえた。しかし気づくとぎこちない手つきで凛を抱きしめていた。実家から持ち帰った作文の中に、こんな一文があったことを思い出したからだ。手は悲しんでいる人を抱きしめるためにあるのだと。凛と同じ小学1年生のとき、徹朗はそんな気持ちをもった少年だったのだ。徹朗の腕の中で凛はじっとしたまま動かなかった。
 週末の朝、室内にはダンボール箱が積みあげられた。「できた」「ありがとうございます」。凛の引っ越しの準備が終わった。明日になれば美奈子が迎えにきてくれる。2人一緒にすごすのは今日で最後。「どこか行くか?」。2人は動物園に出かけた…。

 凛(美山加恋)との生活を再スタートさせた矢先、徹朗(草なぎ剛)はショックをうけた。凛が持ちかえったテストは45点。「誰かが勉強を一緒にみてあげないと」。担任の石田(浅野和之)の指摘はもっともだが、残業つづきの徹朗にはそんな余裕はない。頼れるのはゆら(小雪)しかない。「来てもらう回数、ふやしてもらえないかな? 国語や算数もみてもらいたいんだ」「他の子も教えてるから」。それでもゆらは都合をつけてくれることになった。
 徹朗は職場で離婚のショックを見せなかった。営業成績はトップ。「おまえ、俺より先に課長になるんじゃないの?」。先輩の宮林(東幹久)からやっかみ半分でからかわれても「何、言ってるんですか」と笑顔でうけながせた。
 ゆらがマンションに帰ってくると、部屋の前で勝亦(大森南朋)が待っていた。「ちょっと話せる?」。友達関係の長かった勝亦が突然、ゆらに恋人になってほしいと告白したのは理由があった。「俺の何倍も稼いでいたときはやっぱり気がひけたから」。そういえば徹朗もゆらが外資系証券会社に勤めていたことを知って驚いた。
 「今までと変わる気はしないっていうか。ちょっと考えてみる」。ゆらは勝亦への返事をにごした。
 「俺はおまえをそんなふうに育てた覚えはない」。井上から仕事の甘さを叱責された徹朗は、むしゃくしゃした気分でオフィスに戻った。残業していた部下の岸本(要潤)が企画書をさしだした。「読んでください」「その企画は却下されたはずだろ」。徹朗が一言ではねつけると、岸本はふてくされて帰ってしまった。
 徹朗が帰宅すると美奈子(長山藍子)が待っていてくれた。「すいません。自分で凛を育てると言っておきながら、来ていただいて」「本当に大丈夫?」。美奈子はそれ以上は言わなかったが、不安を感じているのは明らかだった。
 徹朗は外回りの途中、義朗(大杉漣)の会社に寄って昼食に誘った。「どうする?」。義朗の定年日が目前に迫っていた。「いいよ別に」。徹朗が岸本のことをボヤくと、義朗は「家に呼んで可奈子さんの手料理でも食わせりゃ、部下なんてなついてくる」とこともなげに言った。離婚したことをまだ打ち明けてないのだ。「おまえは黙って俺のいうとおりにすればいいんだ」。徹朗はムッとしたが、こらえた。
 ゆらが勉強をみてくれる時間がふえたおかげで、凛は落ちつきをとり戻した。徹朗に対しては相変わらず敬語だが、それなりに生活のペースにも慣れてきたようだ。気がつくと2人して同じようなしぐさをしていることも。「やっぱり似ちゃうんだね」。ゆらに指摘されて、徹朗と凛は思わず顔を見あわせて笑った。ゆらは亜希(田村たがめ)にふと本音をもらした。「もしかしたら子供にハマったかも」。
 凛がさかあがりの練習をしたいと徹朗に訴えた。クラスでできないのは3人きりらしい。凛から徹朗に何かを要求するなんて珍しい。「よし、今日から朝練だ」。2人して近くの公園で練習をはじめた。「一生懸命ですね」。様子を見にきたゆらに徹朗は気にかかっていたことをたずねた。「どうして会社を辞めたの?」「一度立ち止まってみたかったんです。本当に大切なものを見つけるために」。徹朗はかさねて聞いた。「見つかった?大切なもの」。ゆらはさっぱりした表情でこたえた。「まだです。でもいつかきっと見つかると思います」。
 義朗が定年を迎えた。徹朗が実家で待っていると、義朗は遅く帰ってきた。「送別会?」「ああ」。義朗はうなずいたが、実際はバーで時間をつぶしてきた。義朗の定年をねぎらってくれる社員など1人もいなかった。酔いがまわるにつれて、義朗は仕事の自慢話を繰り返した。突然徹朗は打ち明けた。「離婚したんだよ、俺」。息子の真剣な口調に義朗の表情がこわばった─。

 徹朗(草なぎ剛)はマミ(山口紗弥加)に誘われて居酒屋へ。「相談って何?」「別にないです」。3年前の一夜のことがあるだけに、徹朗は急に身がまえた。「大丈夫ですよ。困らせようなんて思ってないですから」。マミはいたずらっぽく笑ったが、徹朗は落ちつかなかった。
 徹朗は凛(美山加恋)が上ばきで登校しようとするのに気づいた。「はき替えるの、忘れたのか?」「違います。クツがなくなりました」。徹朗は深刻には考えなかったが、その夜、凛は泣きながら打ち明けた。「体操袋もなくなっちゃいました」。母親可奈子のお手製だけに凛の落ち込みようは大きかった。「先生にちゃんと言うんだぞ。お父さん、なるべく早く帰ってくるから」。
 徹朗は井上部長(小日向文世)から誘われた接待を断った。井上は代わりに岸本(要 潤)に声をかけた。これまでの徹朗なら心穏やかではいられなかったはずだが、いまは仕事よりも凛のことが気がかりだ。凛はどうしても担任に伝えられなかった。元気のない様子にゆら(小雪)はある予感がした。「イジメられてるんじゃないでしょうか?」「まさか!」。徹朗は信じられなかったが、ゆらに勧められて連絡帳に靴と体操袋を探してくれるよう書いてみた。
 徹朗が残業していると、ゆらから連絡がはいった。「ウチに来ているんです」。下敷きまでなくなって、かなりショックを受けているという。徹朗がゆらのマンションに迎えにいくと、凛はすでに寝てしまっていた。「体操袋がなくなって、お母さんへの思いが一気にあふれたみたいです」。徹朗の前ではほとんど母親のことを口にしなかった凛だが、やはり会いたい気持ちを我慢していたのだ。
 翌朝、凛が嘔吐した。「大丈夫か?」。徹朗は病院につれていってから出社するつもりでいたが、結局丸一日つぶれてしまった。「学校にいくのが嫌みたいなんだ」。ゆらは担任教師と話しあうことを勧めてくれた。「怠慢な先生だったら、どうするんですか」。ためらっていた徹朗はゆらのその一言で決心した。
 「犯人探しをするつもりはありませんから」。担任の石田(浅野和之)は自信たっぷりに説明したが、徹朗は釈然としなかった。そして凛の不登校のせいで、徹朗の仕事にも支障がでてきた。得意先には遅れる。夜の接待には出れない。ついに井上が声を荒らげた。「それじゃ仕事にならないだろ」「勝手言って本当にすみません」。徹朗は頭を下げるしかなかった。
 日曜日に美奈子(長山藍子)が来てくれた。「凛ちゃん、上手ねえ」。料理を手伝う凛が笑顔になった。ひさしぶりのなごやかな空気をチャイムの音が破った。「離婚したって言ったきり、何の連絡もよこさないで」。義朗(大杉漣)だった。定年退職したというのに、あいかわらずのスーツにネクタイ姿。「凛、公園で遊んでおいで」「はい」。そして徹朗、美奈子、義朗の3人は向かいあった。「どうして亭主と子供をおいて、好き勝手にパリなんかに行けるんだ」。義朗はすべての責任は可奈子にあるものと決めつけた。美奈子は「夫婦のことは当人にしかわからないことも」と言いかけて途中で言葉をのみこんだ。義朗の怒りのほこ先は徹朗にも向けられた。
 「一家の恥だぞ」。さらに凛の不登校についても「甘やかせてきたからだろう。どうゆう育て方をしてきたんだ」とはき捨てた。
 徹朗は再び石田をたずねた。しかし石田は「これ以上、私に何をしろと言うんですか」と聞く耳をもたない。仕方なく徹朗が校長に経緯を打ち明けていると、あわててやって来た石田がとんでもないことを言いだした。「盗まれたふりをしている可能性もあるでしょ。おたくはいろいろと問題がおありだから」。母親がいなくなった寂しさから、凛が嘘をついて徹朗の関心をひこうとしているというのだ。
 徹朗は怒りがこみあげた。「凛は嘘なんかつきません!。本気でやってください。それまで毎日でも学校に来ますから」。徹朗の気迫に石田はたじろいだ。校長は再調査を約束してくれたが、石田は2人きりになると徹朗につっかかってきた。「校長と話すときは必ず私を通してください!」。徹朗はつい笑ってしまった。生徒のことよりも、自分のメンツだけを気にする姿は、ついこの前までの自分とウリ二つだったからだ。
 学校からの帰り道、凛の体操袋を見つけた。拾った誰かが木の枝にひっかけてくれたらしい。徹朗はきれいに洗濯すると、ゆらに勉強を教えてもらっていた凛の前にさしだした。「あっ!」。凛の表情がパッと輝いた。「よかったね」。そしてゆらと一緒に喜ぶ凛を見ていた徹朗は、ある決意をかためた─。

 徹朗(草なぎ剛)は来月いっぱいで退職したいと井上部長(小日向文世)に伝えた。「家の近くの信用金庫でお世話になるつもりです」。残業はないが、給料は半分になる。「おまえがその程度のヤツだと見抜けなかった自分にムカつく」。今度の社内人事で井上は常務への昇進がウワサされている。子飼いの部下の突然の退職は影響をおよぼすかもしれない。しかし井上の口から慰留の言葉はでなかった。
 凛(美山加恋)の不登校は続いていた。ある夜、担任の石田(浅野和之)が突然たずねてきた。「先生が来てくださったぞ」。しかし凛は逃げるように、勉強を教えてくれていたゆら(小雪)と自分の部屋にひきこもった。石田はなくなった凛のクツと下敷きを差しだした。凛を困らせたくて同級生の女の子が隠していたという。「申し訳ありませんでした」。そして石田は授業でつかったプリントの束を徹朗に手渡した。「教師になりたての頃は、こんなにためなかったのに」。それまで事務口調だった石田が、その瞬間だけは本音をのぞかせたように徹朗には感じられた。これで明日から登校してくれるはず。そんな徹朗の期待はあっさり裏切られた。「行きたくないです」。凛ははっきりと言った。石田に対する不信感は消えてなかった。
 「本気かよ」。宮林(東幹久)はマンションにまで押しかけてくると、徹朗に退職の真意を問いつめた。「なんでそんなにさっぱりしてるんだよ」。宮林には徹朗の平静ぶりが信じられなかった。かたや徹朗には他人のことなど関心ないと思ってきた宮林が、まるで自分のことのように興奮しているのが不思議に見えた。
 義朗(大杉漣)が足を骨折して入院した。「かえってよかったかも」。美奈子(長山藍子)が思わずそうもらしたのには理由があった。義朗は趣味がなく、近所づきあいもない。定年退職したのに、自由な時間をもてあましていたからだ。入院していれば暇つぶしにはなる。
 「遅くまでは無理ですから」。宮林から声をかけられて、徹朗は気のりしないまま合コンに参加した。退職を間近にひかえた徹朗に関心をしめす女の子はいなかったが、徹朗にはむしろ好都合だった。「俺、急ぐんで」。凛の待つ自宅へ急いだ。
 その夜、子供部屋から泣き声がもれてきた。「お母さん」。寝ぼけた凛は泣きながら徹朗にしがみついた。「大丈夫だから」。いまの徹朗はしっかりと抱きしめることしかできない。数日後、徹朗はゆらに銀行を辞めることを伝えた。「驚いた?」「はい。でも間違ってないと思います」。徹朗はその一言が聞きたかったのだ。「よかった」。徹朗はホッとしたように微笑んだ。
 日曜日、徹朗は凛と遠出した。凛の気分転換になればとゆらが勧めてくれたのだ。一面の雪景色のなか、2人は大きな雪だるまを作った。「学校、どうするんだ? お父さん、銀行辞めることにしたんだ。今までとは違う生きかたをしたいんだ」。凛は何も言わない。徹朗はきっぱりと言った。「凛ともっと一緒にいたいんだ」。2人は歓声をあげて雪合戦をした。「ヤッター!」「やったなあ」。徹朗は願った。凛は母親のいない寂しさをずっと抱えていく。だからこそ父親には愛されていると感じてほしいと。
 「学校、行くのか?」。やっと凛がその気になってくれた。しかし校門の前に石田がいるのに気づいた途端、凛は動けなくなってしまった—。

 井上部長(小日向文世)が飛び下り自殺を図った。一命はとりとめたが、意識が戻らない。遺書はなかったが、常務になれなかったことが原因なのは間違いない。徹朗(草なぎ剛)は自分を責めた。昨夜義朗(大杉漣)の面会時間を気にするあまり、いつもと違う井上の様子を見逃してしまった。「親父のせいだからな。どうしてくれるんだよ!」。徹朗はいき場のない怒りと悲しみを義朗にぶつけた。
 ゆら(小雪)も心配してくれた。そんな彼女がいれてくれた温かいココア。「おいしい」。徹朗の表情が少し和らいだ。翌朝から徹朗は野菜や果物の特製ジュースを作りはじめた。凛(美山加恋)がうれしそうに見ている。「乾杯!」。徹朗は誰かのためにしてあげることの喜びを感じた。
 井上が意識を取り戻した。「お会いすると言ってます」。断られるのを覚悟していたが、付き添っていた井上の妻は病室に入れてくれた。ベッドの上で井上はぼんやり窓の外を見ていた。「ホントにいい天気だ」。井上は別人のように穏やかな表情をしていた。「すべてのことが遠い昔のことに思えるよ」。井上には職場に戻るつもりはなかった。「奥さんに怒られちゃったよ。息子と娘にも」。井上はつかの間泣いたが、徹朗に向き直ったときには笑みを浮かべていた。「新しい仕事も子供のこともうまくいくといいな。おまえならきっとうまくいく」「はい」。会社人間だった井上はようやく家族との絆に気づいた。徹朗は安心して病室をあとにした。
 「井上部長、もう大丈夫です」。ふと立ち寄ったスーパーでゆらに出会った。「よかった」。ゆらは結婚パーティーの帰りとあってドレスアップしていた。ゆらと立ち話していると呼びかけられた。美奈子(長山藍子)だった。「失礼します」。ゆらが立ち去ると、美奈子は徹朗の顔色をうかがうように言った。「これからどなたかとおつきあいすることがあっても、凛ちゃんのことだけはちゃんと考えてあげてね」。美奈子がゆらをどんなふうに見ているかが分かった。「そういうことは全然考えてませんから」。徹朗は即座にこたえた。
 「お世話になりました」。徹朗にも職場を去る日がきた。居酒屋での送別会にきてくれたのはマミ(山口紗弥加)だけ。徹朗の携帯電話が鳴った。義朗からだった。知りあいの融資話を聞いてもらいたいという。「俺、きょう銀行を辞めたんだよ」。義朗は激怒した。「どうして俺に断りもなしに辞めたりするんだ。誰がおまえを立派に育てたと思ってる。なんとか言ったらどうなんだ!」。なにも言う気になれない徹朗は電話をきった。
 徹朗は珍しく酔いつぶれた。そこへ亜希(田村たがめ)と映画を見てきたゆらが出くわした。「私、知り合いのものです」。いっこうに起きる気配がない。「せっかくのデートなのに」。マミに任せておけばいい。「じゃあ、失礼します」。ゆらは気になりつつも店を出た。
 結局マミが徹朗を自宅まで送り届けた。「お父さん、寝てるんですか?」。初めて目にする父親の姿に凛は驚いたようだ。「お酒をちょっと飲みすぎちゃったの」。マミは徹朗をベッドに寝かすと帰っていった。同じころ、ゆらはベッドの上で眠れない一夜をむかえていた。自分でもなにが原因なのか、分からなかった。
 「一緒にベッドまで運んでくれたのか。ゴメンな」。翌朝Yシャツ姿で目覚めた徹朗が凛とジュースを作っていると、新しい職場となる信用金庫から電話がかかってきた。「では、うかがいますから」。
 呼び出された徹朗に人事担当者から、思いもかけない事実が伝えられた—。

 信用金庫への再就職話は流れてしまった。徹朗(草なぎ剛)はハローワークに通うが、残業なしという条件にあう仕事はなかなか見つからない。「まいったよ」。徹朗が沈んだ声をもらすと、ゆら(小雪)はさりげなくつぶやいた。「いいですよ。パニックの時、かけてください。電話」。
 「私、好きな人がいる」。その気持ちを勝亦(大森南朋)に打ち明けた。「俺、まだおりる気ないから」。それが勝亦の返事だった。
 下校中の凛(美山加恋)を可奈子(りょう)が待っていた。「凛」「お母さん」。
 胸に飛びこんできた凛を可奈子はしっかり抱きしめた。「ちゃんとごはん、食べてる?」。凛が徹朗の買ってくる弁当や出前ですませていると話すと、可奈子の表情はくもった。「できるだけ早く、一緒に暮らせるようにするからね」。可奈子は凛がのぞかせた戸惑いの顔を見のがした。
 スーパーで買い物をしていたゆらは、ふいに声をかけられた。マミ(山口紗弥加)だった。「徹朗さんのお知り合いのかたですよね」。あの居酒屋以来だ。マミがこれから徹朗のマンションを訪れると知って、ゆらは動揺した。マミが徹朗に思いを寄せていることを感じとったからだ。帰宅してからも、ゆらの心は鎮まらなかった。
 じつはマミは宮林(東幹久)、岸本(要潤)と一緒だった。「どお?新しい部長は」。岸本は合わないらしいが、うまくハマった宮林は課長に昇進した。「おまえは信用金庫にいったら、いきなり部長になれるんじゃないの?」「まさか」。徹朗は再就職の話がなくなったとは言いだせなかった。酔いつぶれた宮林を残して、マミと岸本は先にマンションを出た。「凛ちゃんには勝てないわね」。帰りの夜道、マミはさびしそうにつぶやいた。
 「お父さん、元気がないんだ」。凛は子供心ながら徹朗の変化に気づいていた。「今度一緒に遊園地、行く?」。ゆらは気分転換にと誘った。「3人がいい。凛とお父さんとお母さんで」。ゆらは心のどこかで自分の名前が出るものと思っていたからショックを受けた。「お母さんに会ったの?」。凛はうなずいた。「迎えにくるって」。ゆらはさらに大きなショックに打ちのめされた。
 その頃、可奈子から連絡を受けた徹朗は、彼女が宿泊しているホテルの一室を訪れていた。「パリから帰ってたんだ」。可奈子は美術品の鑑定や買いつけをするキュレーターとして、順調なスタートをきっていた。「だからこれからは私が凛と暮らす」「ちょっと待てよ」。可奈子は家を出ていくときに、凛を愛していないとはっきり口にした。「落ちついたら迎えにくるつもりだったわよ」「凛は渡せない。勝手に会うのもやめてくれ」。2人とも一歩も引き下がらなかった。
 徹朗が帰宅すると、凛はゆらに勉強をみてもらっていた。「どうしてお母さんに会ってたことを話さなかったんだ」「3人一緒がいい」。そう言うなり凛は子供部屋に閉じこもった。初めて目の当たりにする反抗的な態度に徹朗はうろたえた。「凛は母親のほうがいいのかな」。弱気になる徹朗に、ゆらはまず離婚と仕事のことをきちんと説明すべきだと勧めた。「凛ちゃんはお父さんとお母さん、どっちかを選ぶことなんて、できないんだと思います」。
 徹朗はまず職探しのことを凛に話した。「お父さん、元気だすし、仕事が見つかったら料理もつくるから」。凛は返事こそしなかったが、理解してくれたようだ。「お父さんとお母さんは夫婦じゃなくなったんだ。もう仲良くできないんだ。だから3人一緒に住むことはできない」。凛はグッとこぶしを握りしめたまま、顔を上げようとしなかった。翌朝になっても凛は口をきこうとしない。「気をつけていくんだぞ」。やはり凛は黙ったまま学校へむかった。
 可奈子の部屋に美奈子(長山藍子)がやってきた。「自分が何をしたか、わかってるの!」。いきなり美奈子は可奈子の頬を打ちすえた。「ごめんなさい。でも今は私、凛と暮らしたい」。可奈子は泣きながら訴えた。「たとえわずかな間でも、凛と離れちゃいけなかったのよ。今ごろ、気づくなんて母親失格ってわかってる」。もう美奈子はわが娘を責めることはできなかった。「ウチに帰っていらっしゃい」「お母さん」。
 徹朗は凛の担任の石田(浅野和之)から呼びだされた。「本当に凛がそんなことを!」。友達からバッグを取り上げたという。母親の手作りバッグだった。「今日は叱らずにそっとしておいてあげてください」。凛は教室に1人残っていた。「帰ろう」。夕暮れ迫る帰り道、「昨日の話、わかってくれたのか?」。凛は悲しみをこらえてうなずいた。「ごめんな、凛」。徹朗はそれだけ言うのがやっとだった。
 その夜、徹朗はある決意を固めて、ゆらのマンションを訪ねた─。

 徹朗(草なぎ剛)はもう一度、親子3人で暮らしたいと可奈子(りょう)に伝えた。「俺、本当に変わったんだ」。しかし可奈子の決心は変わらなかった。「私があなたを愛することはもうない。凛(美山加恋)と2人でやっていきたいの」。可奈子は凛の部屋にいくと、自分の手作りの品々を指さした。「いつも凛のそばにいたのは私よ。たった数ヶ月、面倒をみたぐらいで父親ぶらないで」。徹朗が凛のために銀行を辞めたことも信じようとしない。可奈子は最後にこう言い放った。「どうしても凛を返してくれないなら、家庭裁判所にお願いするしかないわね」。親権変更の調停がもの別れに終われば、審判に委ねられることになる。「もし審判になったりしたら」。凛のいない生活など考えられない。徹朗は不安をゆら(小雪)に打ち明けた。
 徹朗は洋食屋で働きはじめた。交代制で時間の融通はきくが、職場は慣れないことの連続。あくまでも新しい仕事が見つかるまでだからと、徹朗は自分に言い聞かせた。しかし収入は減り、月謝も苦しくなってくる。そこでゆらに凛には英語だけを教えてくれるよう頼んだ。「いいんです。私がここに来たいから」。徹朗はゆらの好意に甘えることにした。
 徹朗の手作りカレーをゆらもまじえて3人で食べていると、義朗(大杉漣)が現れた。「家庭教師の北島さん。父です」。義朗は挨拶もそこそこに徹朗を寝室に連れていくと、いきなり銀行を辞めたことを問い詰めた。「一生を棒にふるってことだぞ」「俺は親父と違うから。家族のこと、ちゃんと考えたいんだ」。徹朗はこれまで胸に秘めてきたうっ憤をぶつけた。「会社を辞めたらすることないんだろ? 親父は会社名や肩書でしか生きてこなかったからだ。俺は絶対にそうなりたくない」。定年までの会社人生を息子から否定された義朗は明らかに傷ついた。「俺は間違っていない」。ふりしぼるようにそう言うのがやっとだった。
 家庭裁判所で親権変更の調停が行われた。徹朗も可奈子も譲らなかったため、調停は不成立で終わる公算が高かった。審判になれば、新しい美術館での仕事の決まった可奈子のほうが有利ではないか。「銀行辞めたの、マズかったかな」。ゆらの前でも徹朗は弱音をもらした。凛も父親の変化に気づいていた。「凛はお父さんと住むの? お母さんと住むの?」。ゆらは「心配しないで」と答えるしかなかった。
 調停のことが頭からはなれない徹朗は、職場の厨房で盛りつけたばかりの料理皿を落としてしまった。「何やってんだ、バカヤロウ!」「すみません」。怒鳴られた徹朗は意気消沈して店を出た。「小柳さん!」。岸本(要潤)だった。岸本は仕事の相談をもちかけてきた。「俺はもう上司じゃないから」。徹朗は逃げるようにして岸本から離れた。
 その夜、今度は宮林(東幹久)から電話がかかってきた。「今から行ってもいい?」。すぐに宮林はマミ(山口紗弥加)を連れて現れた。「信用金庫の話、なくなって、今は洋食屋で働いてるんです」。徹朗の告白に2人は驚いた。「バカだと思ってるんでしょ。今日は帰ってもらえませんか」。徹朗はいつものように話せる気分ではなかった。宮林は帰りぎわに言った。「自分で選んだ道、信念をもって進んでいけばいいことだから」。突き放したような口調の中に、優しさがあった。
 徹朗の今後を心配してくれるのはかつての同僚だけではなかった。義朗が新しい就職先の資料を持ってきた。「こんなこと、頼んでないよ」「つっぱるな。今の仕事、思ったようにいってないんだろ」。図星だった。だから義朗が帰ってからも資料を捨てきれずにいた。
 重い気分のまま、徹朗が洋食屋の表を掃除していると、「お父さん!」。凛の声がした。見るとそこに、ゆらと凛が笑顔で立っていた—。

 凛(美山加恋)の親権は審判の場で争われることになった。「俺のわがままかな。たった数ヶ月、凛のことみただけなのに」。徹朗(草なぎ剛)は揺れる胸の内をゆら(小雪)に打ち明けた。そしてゆらを通じて、勝亦(大森南朋)に弁護士を紹介してもらった。凛にも正直に話した。「はい」。凛はいつものように素直に返事した。
 「やっぱり母親といた方がいいんじゃない?」。美奈子(長山藍子)は親権を可奈子(りょう)に渡してほしいと徹朗に頭を下げた。「許して。私も一人の母親なのよ」。美奈子の気持ちはわかるが、徹朗の決心は変わらなかった。「すみません」。凛を手放すわけにはいかない。
 徹朗と凛の生活ぶりを聞き取りするために、家庭裁判所から調査官がやって来た。「お父さんははずしていただけますか」「思ったとおりに答えればいいから」「はい」。凛は屈託なくうなずいたが、徹朗は落ちつかない。可奈子と一緒の時はもっと違う表情を見せるのではないか。「不安だよ」。ゆらにこぼした。
 「今夜、ウチに泊めたいんだけど」。可奈子から突然言われて、徹朗は焦った。本心は断りたいが、調査官の目を意識した。「いいよ」。楽しそうに遠ざかっていく母と娘。徹朗は気持ちをふりきって背を向けた。
 翌日ゆらは凛を連れた可奈子に出会った。「ウチの母ったら、おかしいのよ。小柳とゆら先生が親しそうだとか言っちゃって」。ゆらは何も言い返さない。「近いうちに凛は私と暮らすことになると思うので、それまでよろしく」。
 後からゆらがマンションを訪ねると、仕事に出かけた徹朗の代わりに、義朗(大杉漣)の姿があった。「弁護士さんのことで、お世話になりまして」。義朗のもとにも調査官がいくことになっていた。「でも凛のこと、何もわからなくてね」。義朗が困惑げにもらした。「きっとすぐ仲良くなれます」。ゆらに促されて義朗は子供部屋にむかった。「凛、先生がおみえになったぞ」「はい」。凛がうれしそうに出てきた。
 審判初日がきた。徹朗側の弁護士は可奈子が凛をおいて家を出たことを厳しく追及した。「私はまず離婚をしたいと思いました。小柳は子供を愛してなかったから、親権の肩書がほしいだけで、養育は私にさせてくれると思ったんです」。可奈子が一気に心情を明らかにすると、徹朗は思わず叫んでいた。「可奈子、俺、ホントに変わったんだ。凛に聞いてみてくれ」。可奈子は感情を殺して答えた。「凛は、あなたの話、何もしなかったわ」。
 可奈子側の弁護士は離婚の原因が徹朗にあることをついてきた。「たしかにあの頃の私は仕事第一で、父親として失格だったと思います」。さらにマミ(山口紗弥加)との一夜をもちだした。「3年前に浮気をしましたね」「そ、そんなたった1回です」。徹朗の発言はしっかり記録された。
 「あなたは子供を捨てたんです」。徹朗側の弁護士は追及の手をゆるめなかった。「でも後悔しているんです。もう二度としません。だから凛の母親でいさせてください。他に何もいりませんから」。可奈子は泣きくずれた。
 数日後、弁護士の事務所を訪ねた徹朗は一通の手紙を手渡された。義朗が届けてきたという。「上申書のようなものです。家庭裁判所に提出するつもりですが、読まれますか?」「はい」。徹朗は食い入るように文面を読みはじめた─。

 徹朗(草なぎ剛)が洋食屋で働いている間、義朗(大杉漣)が家事を手伝ってくれることになった。徹朗は帰宅が遅くなって、凛(美山加恋)の寝顔しか見れなくとも満ち足りていた。だから凛の担任の石田(浅野和之)にも家庭裁判所で審判を進めていることを打ち明けた。「教師として子供に本気で接することの意味を改めて考えるようになりました」。石田も凛と真剣に向きあうことによって、自らの生き方を変えたのだ。
 美奈子(長山藍子)は家庭裁判所の調査官から徹朗と凛の暮らしぶりをたずねられた。「父親として一生懸命やってくれてますが、正直いたらないところもあると思います」。迷った挙げ句にそう答えた。そしていま一度可奈子(りょう)の気持ちを確かめずにはいられなかった。「これからは何があっても凛ちゃんのことを一番に考えてね」「約束する」。可奈子はきっぱりと言いきった。
 美奈子の陳述書は次の審判に提出された。「作れる料理はわずかですね。母親なら今すぐ栄養のバランスのとれた料理を作ることができます」。可奈子側の弁護士に厳しく追及された徹朗は黙りこんだ。「美奈子さんは可奈子さんの実母で、信用性に欠けます」。すかさず徹朗側の弁護士は次回に美奈子への反対尋問を要請した。
 「本当に凛のために銀行を辞めたのね」。可奈子は宮林(東幹久)から徹朗の退職のいきさつを教えられて驚いた。宮林も審判を打ち明けられてショックを受けた。と同時に可奈子の不安を見抜いた。「凛ちゃんが小柳をドンドン好きになるのが怖いんだろ?」。可奈子は何も言い返せなかった。
 ゆら(小雪)が凛の願い事を徹朗に伝えてくれた。「一度でいいから、お父さんとお母さんと3人で遊園地に行きたいって」。徹朗は戸惑った。「どうしたらいい?」「小柳さんが思ったとおりでいいんじゃないですか」。ゆらの一言で徹朗は確信した。
 次の休日、徹朗と凛は遊園地にむかった。「おはよう」。可奈子が待っていた。凛は2人と手をつなぐと元気よく引っ張っていった。たくさんの乗り物にのった。可奈子は徹朗と凛の仲の良さに内心ショックを受けていた。だから実家に帰るなり、育児日記と写真アルバムを引っ張りだした。凛が生まれた日から家を出るまでの7年間、1日も途切れることなくつけてきたものだ。「凛との思い出、終わらせたくない」。日記を抱きしめる娘の背中を美奈子はじっと見つめた。
 可奈子は日記とアルバムを家庭裁判所に提出した。「これはなかなか強力かもしれません」。弁護士から知らされた徹朗は後悔の念にかられた。凛が生まれた当初は、可奈子からよく凛の話を聞いた。しかし仕事が忙しくなるにつれ、徹朗は可奈子の話に耳を傾けなくなった。夫婦げんかが続き、やがて可奈子は何も言わなくなった。凛の歩みを徹朗はまったく知らなかった。「どうしてもっと早く、大切なものに気づかなかったんだろう」。声を震わせて悔いる徹朗をゆらは諭すように慰めた。「いいじゃないですか。やっと気づけたんだから」。
 美奈子の反対尋問が始まった。可奈子側の弁護士は徹朗では凛の世話を十分にみることができなかった実例を並べたてた。「つまり小柳さんは、父親失格ということですね」。美奈子はじっと黙っていたが、しばらくすると吹っ切れたように口を開いた。「いえ、徹朗さんは立派な父親です」。予想外の証言に可奈子はおろか、徹朗も自分の耳を疑った。美奈子の決定的な一言で、徹朗側の弁護士は反対尋問を見送った。「決定は追ってお知らせします」。審判官が締めくくった—。

 親権は可奈子(りょう)に変更された。仕事を終えた徹朗(草なぎ剛)が帰宅すると、すでに可奈子が凛(美山加恋)を迎えに来ていた。可奈子は凛を促した。「お父さんに挨拶して」。凛は徹朗を見つめた。「お父さん、さようなら」。徹朗が何も言えないまま、凛は可奈子と出ていった。
 ゆら(小雪)が訪ねてきた。「こんにちは」。返事がない。子供部屋をのぞくと徹朗がぼうぜんとベッドにもたれていた。ゆらは徹朗の横にすわると、徹朗の髪を優しくなでた。ゆらの目から涙がこぼれた。2人の胸に熱い悲しみがこみあげてきた。
 翌朝、ベッドにもたれ、寄り添ったたままで寝ていた徹朗とゆらは、目を覚ました。「おはようございます」。「おはよう」。徹朗も目を覚ました。「…いてくれて、ありがとう」徹朗は言った。「もう少し、いましょうか」「凛が出て行った—」。ゆらの言葉に答えることなく徹朗はつぶやいた。
 洋食屋の仕事は凛のことが頭から離れず集中できない。徹朗は皿を洗い終え、運ぶ途中に皿を落とし割ってしまった。「すみません」「具合でも悪いのか?」「いえ」。「仕事にならないなら、帰れ」そう言われ、とぼとぼと洋食屋をあとにする徹朗だった。
 翌日、徹朗は仕事を休んだ。スーパーマーケットへ買い物へ行くとゆらに会った。
 「洋食屋、もう辞めようかと思ってる」「どうしてですか?」「凛がいなくなったんだから、意味ないよ」ふてくされながら徹朗は胸の内をゆらに打ち明けた。凛のためにみどり銀行を辞め、自分には合わないけどやりたくもない洋食屋の仕事も凛のために選んだと。
 「凛ちゃんを言い訳にするのは、やめてください」突然ゆらが言った。「してないよ」
 「どうでもいいよ。凛はもういないんだから」。そう言い残して行こうとする徹朗にゆらが怒った…。

小柳 徹朗 – 草彅剛
小柳 凛 – 美山加恋
小柳 義朗 – 大杉漣
北島 ゆら – 小雪
宮林 功二 – 東幹久
岸本 肇 – 要潤
坪井 マミ – 山口紗弥加
井上 啓一 – 小日向文世
今枝 吾一 – 伊藤紘
香山 孝信 – 大高洋夫
勝亦 亮太 – 大森南朋
谷川 亜希 – 田村たがめ
小柳 可奈子 → 大山 可奈子 – りょう
大山 美奈子 – 長山藍子
大山 隆三 – 阿部六郎
審判官 – 遠藤たつお
調停委員 – 宇納侑玖・野田貴子
神田 理人 – 福本伸一
原口 幸治 – 中根徹
村上 令子 – 長野里美
石田 和也 – 浅野和之
斉藤 裕一 – 松重豊

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・人間失格

感想

この作品は日本のドラマの中でも不朽の名作ではないかと思う。
このドラマでは草彅剛という人間そのものが存分に活かされた作品で、だんだんと子供に向かっていく姿を見るとはもどかしくてでもすごく温かかった。

このドラマは草なぎ剛の僕シリーズで、その中でもこの作品が一番好きかもしれない!
家庭を顧みずに仕事だけを優先してきた主人公が、ある日突然娘を家を出て行ってしまった。
その後今まで娘と関わってこなかった父親が、少しずつ娘と心を通わせていくところは感動しかない。

ドラマが放送されていた当時はまだ自分も幼い頃で、当時の自分の親も厳しくて、このドラマを見ながらこんな風に人って変われることができるんだと感動した記憶がある。
大人になってからも何度も何度も見ているけれど、草なぎ剛が出演しているドラマの中でもこの作品が最高傑作!

まとめ

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